<−すーぱー ま・り・お−>





(ステージ1)


真利男はいつものように青果コーナーの商品を並べていた。

自分が仕入れ、そしてこのコーナーに 商品を見栄え良く飾る。

新鮮さが最も重要視される青果は 置き方や場所によって売り上げが断然変わるのだ。

その配置は 照明の当たり加減、温度・湿度など計算しつくされたものだ。



真利男は元々アルバイトだった。

彼は地道な努力と工夫を積み重ね、現在の地位を手に入れた。

与えられた空間。面積にしてわずか2坪にも満たない一画。

それが真利男の世界。いや宇宙であった。

しかし、その聖地を土足で踏みにじる者が現れた。

「 きゃつめ・・・ 」

ふとそのときの屈辱を思い出し、唇を噛み締める真利男。

紫色に変色した唇の端に血が滲んでいることから

我々は真利男の怨念の深さを想像するに難くなかった。

「 二度と俺の可愛い青果たちに手出しはさせん・・・!」

しかし、その期待を裏切ってきゃつは正面から堂々と入って来た。

きゃつの登場の(脳内)音楽が鳴る。

内臓脂肪、皮下脂肪が程よく身についた体。

全ての物理攻撃無効化する。

二の腕は盛り上がった丸太のような太さ。

あれは脂肪ではない、筋肉だ。





そしてあの大仏パーマ。

間違いない! 奴だ。 奴が来たんだ!


クッパ

このスーパーにあった2つの試食コーナーをたった一人で壊滅状態にしたあのクソババァ。

「くっぱ、くっぱ」と音をたて、試食品を食べるさまから人々(スーパー店員)から

『 販売殺しのクッパ 』

と恐れられていた。

ある日、茶碗に飯を盛って、恥ずかしげもなく試食コーナーへ現れたのを見たとき

さすがの真利男も足の震えが止まらなかったものだ。

しかし、他人事だった。

奴が神聖なる青果コーナーにあらわれるあの日までは・・・。



入店したクッパの手には本日の目玉商品を掲載した当店の折込みチラシが握りしめられていた。

「 店長!自分は、自分はあのチラシの内容を確認していません!」

「 大丈夫だ! 広告が売り切れていればどうということはない!」

クッパは店内に入ると すぐに青果コーナーへダッシュした。

「 い! 」

真利男はクッパの後を追いかけたが、どんどん引き離されていく

「 ありえない・・ 普通ババァの3倍の速度じゃないか!」

真利男が追いついたとき、すでにクッパは臨戦態勢をとっていた。

真利男は気付かれないように日用品コーナーの影に隠れ、息を潜め、

バードウオッチング用の望遠鏡で彼女の行動を観察した。

丸窓のレンズを覗く。

刹那、空気を呑む音が鼓膜を震わせた。

その光景。覗き見た世界。平面レンズから悪魔のような魚眼レンズへと変わった。


ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。

クッパは時間限定「青果特売コーナー」に群がる猛者たちを強引に押しのけ

本日の目玉商品を手にとった。

買い物に来ていた主婦達が綿屑よろしくう。

「 圧倒的じゃないか!」

ハウスもののスイカを手に入れると クッパは拳でスイカを叩いた

ポコポコと軽快な音がしていたが、

その音は急にボコッと鈍った音に変化した。

「 ・・・・ど、どうした・・ボクのかわいいスイカちゃん・・・?」

「 あら、やだ。 このスイカ潰れてるじゃない。」

クッパはスイカをの位置に返した。

「 お前がつぶしたんだろおぉぉがぁああああ ・・・!」

真利男は怒りのあまり、手にしていた望遠鏡をグシャリと握りつぶしてしまった。

別のスイカを3つ取ったクッパはお菓子のコーナーに足を運んだ。

「 おかしい・・・」

お菓子コーナーには広告商品はない。

何のメリットも存在しなはず・・。

奴は目玉商品にしか目をくれない。

店側の意図(他の商品もついでに買ってくれること)を

軽く裏切ってくれる人間なのだ。

「なぜだ・・・」

それに・・・ 一人1個までのはずがなぜ3つ持ち歩ける? 出れないぞ!

3つ持ってこの店を出れるはずがないのだ。

「 ふ・・ ばかなやつ・・! 計算も出来ないのか?」

「 奴の頭の記憶メモリは「1つ」「2つ」それ以上は 「たくさん」 に違いない・・・」

真利男は小ばかにしたピエロのような笑いを浮かべた。

「 この店のセキュリティはスペインの無敵艦隊並に硬いんだ! なめるなよ!」

しかし、急に胸騒ぎがした真利男は後をこっそりと尾行した。

「 ん?」

お菓子コーナーにクッパの存在を目視できなかった。

「 たしかにここに来たはず・・・」

お菓子コーナーをゆっくりと歩いていると、妙に違和感を覚えて立ち止まった

「 なにーー!?

「 なにーーー!?」 ( 二度言うな! )

お菓子コーナーのちょうど目線と同じ位置の棚に・・・・ 

お菓子ではなく、スイカが並べられていた (はぁ?)

真利男はすぐレジに目をやった。

きゃつがレジでスイカを1つ清算している。

真利男 : 「 まさか・・・

きゃつがレジを通過すると、店外に止めてあったママチャリにスイカを載せ、

すぐにお菓子コーナーの方向へもどってくるではないか。

真利男 : 「 おのれ〜〜〜〜!!! 謀ったな! クッパ!!